私たちが鎌田幸二先生の作品に惹かれる理由は、その器が放つ「静けさ」にあります。
派手さや即物的な強さではなく、視線を留めるほどに、ゆっくりと深く染み込んでくる存在感。そこには、長い時間をかけて培われた技術と、作り続けることでしか辿り着けない境地が感じられます。
鎌田幸二先生は、鉄分を主とする釉薬「天目釉」、とりわけ人知を超えた現象である「燿変(ようへん)」に、生涯をかけて向き合ってこられた陶芸家です。炎の状態、温度、冷却のわずかな違いによって、同じ表情は二度と生まれない天目の世界。その不確かさと可能性こそが、鎌田先生の制作の原点にあります。
中国南宋時代の天目茶碗との出会いをきっかけに、半世紀以上にわたり研究と試行錯誤を重ね、独自の「鎌田天目」とも呼ぶべき表現を確立してきました。燿変油滴天目の今にも動き出しそうな結晶、燿変翠青天目の吸い込まれるような深い青。それらは偶然の産物でありながら、長年の緻密な研究によって導き出された必然の結果でもあります。
「どれだけ計算し尽くしても、まったく同じものはできない。それが、この仕事の魅力でもある」。
鎌田先生の言葉どおり、一点一点の作品には、作家の世界観と、終わりのない探求の時間が静かに息づいています。
私たち東五六は、その奥行きある天目の世界を、これからも丁寧に伝えていきたいと考えています。